舞扇子とは
歌舞伎、日本舞踊、歌謡舞踊(新舞踊)、民舞など舞踊に欠かせない小道具である扇子。
舞扇(まいおうぎ)、扇、扇子と呼び方はいろいろありますが、夏の暑い時、涼をとるのに使う扇子(夏扇子、夏扇)と区別するために舞踊用の扇子を私たちは
舞扇子(まいせんす)と呼んでおります。
ここでは舞扇に関する基礎的な知識をご紹介いたします♪
【舞扇子の種類と大きさ・サイズ】
仰ぐための扇子と舞扇子の一番大きな違いは、舞扇子は寸法がほぼ決まっていることです。
舞扇子の大きさは大きく分けて3種類。
一般的な寸法は九寸五分(約29cm)で、男性用に一回り大きい一尺の
尺舞扇子(約30cm)、
子供用九寸(27.5cm)があります。
幼児用に八寸(24.5cm)という可愛い扇子もありますが、現在市場に出回っているのはほとんどが上記の3サイズになります。
舞踊家には女性の方が多く、そのため九寸五分の大きさのものが一番柄も豊富で、当店でも最も多くの商品をラインアップしております。
【舞扇子の作り方】
舞扇子(踊り用扇子)は、夏用の扇ぐ扇子と同じように扇面は紙、骨は竹が用いられています。
ただ、舞扇の場合は踊りの動作として舞台で扇子を投げたり、指で挟んで回す『要返し』などを行ったりするため、要に近い骨に鉛のおもりが埋め込まれています。
黒塗骨など塗骨の場合は錘の上から塗料を塗るので見えておりませんがちゃんと錘は入っております。
また、耐久性を上げるために骨と扇面は糊で貼り付けられた上に糸を結んで強化されており、20年、30年と同じ扇子でお稽古されている方もいらっしゃるほど舞扇は丈夫な作りとなっております。
・地紙について
舞扇の扇面は、ただのボール紙の様ですが実は和紙を何枚も重ねて作られています。
芯紙(しんがみ)という薄い和紙を中にして皮紙(かわがみ)と呼ぶ和紙を両側から貼り合わせ、乾燥させた後に扇の形に裁断し、これを地紙(じがみ)といいます。
この皮紙の枚数が多ければ多いほど扇子の開閉の具合が良くなり、折りたたむときも小気味良く閉まります。
最初は平たい地紙ですが扇子を折り畳む為に蛇腹状に型を付け、それを折地と呼びます。
型を付けるには昔からの製法として厚手の型紙(美濃紙等を使用)で地紙を挟み込み蛇腹状に折り畳む方法をとります。
大量生産の現代では機械で折り畳んでいく製法が多いのですが、やはり職人が一枚一枚手をかける製法で作られた扇子は開け締めした時の感触も違います。
飾り扇や歌舞伎役者が使う舞扇はこの昔ながらの製法で作られています。
・絵付けについて
絵付けとは文字通り舞扇の扇面に絵をつけることです。
絵付けは地紙に絵筆や木版などで柄を描きます。
地紙に染料に浸したり金銀箔や色紙などを貼る場合もあります。
もちろん現在は大量生産に適した印刷などの方法で金銀箔やホログラム箔を載せたり、またホットスタンプという地紙に型で加圧、加熱して箔を載せる方法もあります。
・扇骨について
扇骨とは舞扇の竹の部分のことで、外側の太い骨を
「親骨」(扇子を閉じた時に見えている骨)、内側の骨を
「中骨」と言い、扇骨はほぼ全てが天然の竹でできています。
扇骨の作り方はまず最初に、竹の節を除いて同寸法に切り、それを均一な幅と長さに割っていきます。
次にその竹を釜茹でしてアク抜きをします。
そのままの状態よりアク抜きをした方が色付けしやすくなります。
アク抜きした竹を乾かないうちに外側(竹の青い方)と内側(白い方)の2枚に剥ぎ分け、扇子の骨は外側の方を使います。
内側は柔らかくて割れやすく扇子には使いません。
次に要が通る穴を開けますがここで少しでも穴がずれたら綺麗に扇子を閉じることが出来なくなります。
穴を開けた竹を何百枚もまとめて1本の串に通し板状にした上で扇骨の形に削っていきます。
何回も何回も綺麗に仕上がるまでこの作業を繰り返し行います。
特に中骨は薄く削りますので細心の注意をはらって作業する必要があります。
この作業が終われば次は天日にさらして乾燥させます。
乾燥させた扇骨(中骨)を数枚にまとめバフをかけて磨き、扇骨の側面を綺麗に仕上げます。
次に、扇骨に色付けを行いますが、染料が入った釜で骨を茹でる方法とハケを使って扇骨に色を塗る方法があります。
色付けが出来た扇骨の、地紙に差し込む中骨の先端部分を細く薄く機械で削ります。
そして、前もって開けた穴に金属を差し込み要を打ちます。
ちなみに竹には上下裏表があり、この向きを間違えない様に最初から最後まで気をつけて作業します。
そうしないと扇子の仕上がりの見た目が悪くなったり衝撃に弱くなったりしてしまいます。
・舞扇子の骨の色について
舞扇の骨には色々な色があります。
白竹 |
竹素材そのままの色です。
アク抜きの為に竹を釜で茹でますので、その茹で方によって同じ白竹でも扇子屋によって若干色が違う場合があります。
お稽古用の舞扇に多く使用されています。 |
黒塗骨 |
黒い骨で舞扇で一番一般的なものです。
白竹を黒の染料で塗っています。
見映えが良く、上から染料を塗ることで白竹よりも強度が増します。 |
煤竹 |
煤(スス)竹は本来、古いかやぶき屋根の民家の屋根裏や天井からとれる竹のことですが、近年は希少な物となっています。
現在舞扇で使用している煤竹は竹を人工的に煙で燻して茶色く仕上げ、煤竹風に加工したものです。 |
タメ塗 |
赤よりも濃い小豆色の骨です。扇面の柄や地紙の色によってタメ塗りの方が見映えが良い場合に使用します。 |
唐木 |
唐木は石灰、消石灰、硫酸鉄を用い幾度かの工程を経て染め上げます。煤竹と似た茶色い骨ですが煤竹より少し濃い色をしています。 |
【舞扇子の選び方】
・柄のモチーフ
※写真及び図柄の名称をクリックすると該当する商品をご紹介いたします。
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霞(かすみ)は、景色、山、空 を表しています。
曲目の歌詞に上記の文言が入っていると使い易いです。
男踊り、女踊り、幅広く使える柄です。 |
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雲柄は空、雷、雨などを表しています。
男踊りなどで使われる事が多い柄です。 |
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桜は国花にもなっている日本の象徴とも言える花ですので女踊りに良く使われる柄です。
春のイメージもあるので春に関する曲目などによく使用されます。 |
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露草・露芝(つゆくさ・つゆしば)は、水を表しています。
水 川などの関する踊りに用いられる事が多いです。 |
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どんな曲目にも使える万能的な柄です。
特に川や海など水のイメージの曲目に合っています。 |
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波は、海に関する曲目、漁師、海辺の曲目によく使用されます。
男踊りに使用されることが多いようです。
写真は古典的な柄の「青海波」 |
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小石は、幅広く使用出来る柄です。
特に御祝儀物の曲目に使用されます。 |
≪色紙≫
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色紙は、格調が高く公家物や位の高い方の曲目、又は御祝儀物によく使用される柄です。 |
その他、小石をさらに小さくした砂子や禾(のぎ)という柄もございます。
一般的には上記の柄の組合わせのものが多いようです。
・舞扇のぼかし
舞扇子の中で一番シンプルなものが
ぼかし扇子で色とりどりで色とりどりで日舞の練習や
よさこい踊りなど大勢で踊る時によく使用されます。
また、多色にしたり、ほかの柄の背景に組み合わされることの多い柄です。
色付け方法には二通りあり、手引き染めと言って職人が刷毛で色を塗っていく方法とオフセット印刷があります。
前者は上から順番に刷毛で染料を塗り重ねていくので色に深みや立体感がでて綺麗なグラデーションになります。
後者は大量生産でき、安価にできる利点があります。
《ぼかしの種類》
一般的なぼかし:上から下にぼかしてゆきます。
裾ぼかし:下から上にぼかしてゆきます。
天地褄(両褄)ぼかし:扇面の左上と右下にだけぼかしが入ります。
その他に縦ぼかし、三段ぼかし等がございます。
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舞扇・舞扇子、格安品から高級品まで 舞扇子販売・通販の ODORI Company(大阪)